【高機能・アスペルガー部】
「仕事し続けるって大変…就労定着支援について」ゲスト付き交流会のご報告
3月7日(月)10:00~12:00 zoomにてゲスト付き交流会を行いました。
参加者は18名。正会員15名、オブザーバー参加2名。
中二から38歳の方の親御さんが集まりました。
一般社団法人SPIS研究所
今回のゲストは一般社団法人SPIS(エスピス)研究所理事長でいらっしゃる宇田亮一さん。
臨床心理士でもいらっしゃいます。
「仕事し続けるって大変・・・就労定着支援について」というタイトルで、お話していただき、
そのあと質問や感想などを話し合いました。
■就労定着支援システムSPIS
SPISはカスタマイズできる日報システムです。
自分の特性に合わせて項目を決め、自分の毎日をモニタリングします。
なぜ働き続けることが難しいのか
わが子が就労すると、無理なく継続してほしいと願って、親は職場に対してきめ細かな配慮と、困ったことが出てきたときの支援体制を望みます。ジョブコーチや支援担当者が居てくれることは、とてもありがたく心強いことです。
そして制度的には徐々に整いつつあります。にもかかわらず、実際には就労継続はとても難しいということを、私たちは経験しています(1年以内に5割が離職)。
継続できても、さまざまな不調に悩まされ、とても健康的な職場人生とはいかないことも多いようです。支援体制が整っていてもなぜ、働き続けることが難しいのか…
支援者がいるのに本音が言えない。
言葉に出せない。
せっかく言葉に出せても、自分も周囲も混乱してしまうような表出になってしまう。
さらなる薬の服用を求められる…
こんな悲しい情景は、あちらこちらにありそうです。
SPISについて
SPISという「Web日報システム」について宇田さんからお話をお聞きし、うまくいかなかったのはそこだったのか!と目が覚めるような思いでした。
SPISでは、本人・職場の支援者・外部支援者の三者で、パソコンを介して日報のやり取りをします。
事前に設定したセルフチェックを本人が数値で入力、三者がウェブ上で対話を積み重ねます。
数値をグラフ化することで見えてくることもあります。
本人は、閉じたメンバーであるという安心感から、そこが次第に安心安全な居場所になっていき、本音や弱音を吐くことができるようになっていきます(その場を最終的には職場に移行していきます)。
支援者はまた、書き込むことを通して自分の支援の「くせ」に気づくことができます。
言う言わないのタイミングを見極めたり、伝えたい言葉と伝わる言葉の違いに気づいたりします。
これを「カウンセリングマインド」と言うようなのですが、大事なのは、当事者が本音を言える場であるかどうか、心から寄り添い勇気づけるマインドを支援者が一貫して持つかどうかであって、問題解決することではないということがよくわかりました。
職場を本音弱音が言える居場所に変えていくことと、支援者がカウンセリングマインドの対話力、対人関係力を磨くことこそが、実は精神・発達障がい者の「働き続ける」を根本から力強く支えるものだということを、教えていただきました。
宇田さんは、こうした対話力、対人関係力は、ダイバーシティ・インクルージョンという時代の要請でもあると仰っておられましたが、まずわが家庭を顧みて、
子にとって本当に安心安全な本音弱音の言える居場所になっているか、
問題解決ばかりを目指していないか、
親の言いたいことを一方的に言ってしまっていないか、
あえて言わないことにも意味がある…など、
いろいろ考えさせられた学びでした。
宇田さんのまなざしは、いろいろやらかしてしまう親たちにもとても温かく、エールに満ちていて、これこそカウンセリングマインドだと思ったことでした。
以上で、今年度の高機能・アスペルガー部の活動はすべて終了いたしました。
ご協力いただきました諸先生方、支援者のみなさま、そして参加してくださったみなさま、
心より、感謝申し上げます。
来年度も、どうぞよろしくお願いいたします。